聖学院 On-line Information 2010/10
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10/16 第6回ピア・スーパービジョン 参考
[聖学院大学(人間福祉学科)] 投稿日時:2010/10/27(水) 15:43
ピア・スーパービジョン 参考
10月16日人間福祉学科総合研究所 ピア・スーパービジョンの様子は こちら から
社会福祉とはなにか
社会福祉とは、「貧困、障がい、病気、その他あらゆる生活のしづらさ(不適応)」に対し、一人ひとりの能力を引き出しながら問題の解決を図り(人権擁護を含む)、その人らしい幸せな人生が送れるように「生活援助する専門的な職業」である。
それは、各種の専門援助技術(個別相談援助技術、集団援助技術、地域福祉援助技術など)と公的な支援サービス(制度)や民間のサポートネットワークなどを用いておこなわれる。
その担い手は、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士、(認定心理士、住環境コーディネーター)などで、4年制大学による専門教育(授業、演習、実習、スーパービジョン)と、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士については国家資格取得が義務付けられている。
社会福祉士は社会福祉全般、精神保健福祉士は主に精神科領域、介護福祉士は高齢者保健福祉領域で相談・生活支援、訓練、調整業務に従事する。
社会福祉の実践領域はいま多様である。
例えば、知的・身体・精神障がい者福祉関係機関・施設、高齢者関係機関・施設、児童福祉関係機関・施設、生活保護関係機関・施設、各種の医療機関(一般病院・精神科病院)、社会福祉協議会、NPO法人などである。
「困っている人を助けること」は、人類史上、信仰的な献身、慈善、博愛事業など様々なかたちをとり、「共に幸せに生きるための人類の智恵や価値」としてその技は今日まで受け継がれている。
近代の社会福祉は19世紀末の産業革命と福祉問題の激増を起点にイギリスに始まり、1948年の「福祉国家(ゆりかごから墓場まで)」創設により、すべての国家になくてはならないものとなった。
それは、納税と部分的な自己負担をベースとした「社会保障制度と福祉サービス」を基本とする「誰もが安心できる生活保障体制」の確立を意味する。
今日では、それらは、北欧型福祉国家モデルへとさらに進化している。
そこでは、「高福祉高負担」により、医療・保健・福祉・教育の無料化、徹底した完全雇用、子育て支援がなされているのである。
なお、人間福祉学科では、 「北欧社会福祉研修旅行」 (フィンランド、スェーデン、ノルウェー、デンマーク)を毎年実施している。北欧の福祉実践や市民生活を見聞し、自らの理想的な福祉国家像や実践像を描く機会を設けているのである。
メイラハティ小学校で ヘルシンキ・フィンランド カーリシルタ学園で ラハティ・フィンランド
相談業務とは何か
相談業務は、社会福祉の専門家が、主に「個別援助技術(ケースワーク)」を用いて、「貧困、障がい、病気、その他あらゆる生活のしづらさ(不適応)」を解決するために、一対一で行う「基本業務」のことである。
もとより、こころがやさしいとか同情心が厚いといったことは大切なことである。
しかし、それだけでなく、困難な状況に直面し「揺らがない」という、平静さや凛としたバランスが要求される。
それらは、専門教育やトレーニング(演習、実習、ボランティア、スーパービジョンなど)によって修得されるのである。
同時に、彼らがかかえる問題は複雑な場合が多いので、その理解と解決のためには、相談技術だけではなく、集団援助技術、地域福祉援助技術、ケアマネジメントなどの技術も要求される。
さらに、訴えを深く理解し、解決策を見出すために次のような勉強も必須である。
生活に係る一般医学・精神医学、心理学、死生学、社会学、法律学、経済活動に関する知識などである。
実際の相談は次のように行われる。
1回30~1時間程度の面接が基本で、問題解決まで継続的に訴えを傾聴し、問題を明確にし、一人ひとりの潜在的な解決能力を引き出し、活用できる制度やサービス(これらを社会資源という)、情報を収集提供し、問題の解決を図る。
クライエント(福祉サービス対象者のこと。ユーザーともいう)の置かれている条件や心身のハンディ(障がい特性や社会経済状況など)に配慮したきめ細かな対応はもちろん欠かせない。
スーパービジョンセンターとその事業
スーパービジョン(以下「SV」と略)とは、経験の豊かな実務者や教育者(スーパーバイザー)が、経験の浅い専門家(スーパーバイジー)に対し、専門的な「教育・支援」を行うもののことである。
その方法としては、個別SV(1対1)、グループSV(1対5~10)、ピアSV(仲間によるSV)の3種類がある。
ピアSVとは、現場を担う社会福祉専門職同士が集まり、情報交換を通じて、職場での苦労を分かち合い、励まし、研修、自己研鑽するものである。
その基本は、今日、障がい者活動や家族会活動などの分野で世界的な大きなうねりとなっているピアサポート、ピアカウンセリングと同じである。
すなわち、「闘病体験、実践体験などを宝物として、仲間を助けること」である。
ただ、傷のなめあいや自己満足に陥ってしまうことも多いので、個別、集団SVとの併用が有効である。
(人間福祉学科では、総合研究所に事務所を置き、社会福祉領域で働いている卒業生や社会人向けのスーパービジョン事業を実施している。)
2010/10/16 第6回ピア・スーパービジョン報告
[聖学院大学(人間福祉学科)] 投稿日時:2010/10/27(水) 15:18
第6回ピア・スーパービジョン 報告
10月16日(土)、聖学院大学において、第6回ピア・スーパービジョン(以下「PSV」と略)が開かれた。
言うまでもなく、いま、社会福祉の現場は厳しい状況に置かれている。
社会経済状況の悪化を反映し、格差、貧困が蔓延し、心身の健康を損なう人々が増え、業務量が増大し、担い手の負担も増大している。
そこで、今回も、人間福祉学科の卒業生(聖学院ウェルフェアネット)が中心となり、在校生などを交え、各福祉分野に分かれ、仕事の現状、悩み、夢などの意見交換を行なった。
参加者数は、卒業生を中心に、在学生、オープンキャンパスに来校された方々、あせて49人となった。
もともと、PSV事業は、人間福祉学科が 総合研究所に事務所を置き実施している、「スーパービジョンセンター(以下(SVC)と略)の事業の一つである。
そのねらいは、社会福祉領域で働いている卒業生及び関係の社会人をフォローすることである(SVC事業については後段(参考)を参照されたい)。
今回は2部に分かれ、まず第一部では「ソーシャルワーカーとしての歩み」という主題のもと、2人の本学科非常勤講師(同時にSVCスーパーバイザー)のおはなしをうかがった。
はじめに行實志都子 文京学院大学准教授より「ピアヘルパー制度創設と今」と題して、心の病を経験した人が、精神障がい者のためのホームヘルパーとして働くための制度づくり(大阪)などのお話をうかがった。
先生は民間精神科病院をふりだしに、大阪府の職員として活躍され、全国のモデルとなる「ピアヘルパー制度」を創設されたのである。優しさと凛としたお人柄がにじみでたお話であった。
行實志都子 文京学院大学准教授
ついで、廣江仁 (社福)養和会指定障がい者福祉サービス事業所F&Y境港所長から、「病院、作業所、そして今」と題し、障がい者の就労支援や、いま、境港市で取り組んでいる就労継続支援事業についてお話しいただいた。
先生は、はじめに、参加者にお土産のお菓子を配られ、昨年の授業時の学生(3年生)とのやりとりを楽しそうに振り返られた。
お土産は、NHKの「ゲゲゲの女房」で有名になった郷里からもてこられたものだった。
ついで、学生時代の実習のお話に移り、当時、助川先生が実習担当者だったとか、「熱心にイギリスもいろいろ課題を抱えているよ、とお話をしてくれた」などと語られ、会場が沸いた。
お話の中心は、SWとしての歩み、特に三鷹市内に開設された「Mew」での就労援助に取り組んだことを淡々と、ユーモアも交えてお話された。
こころの病におちいった方々に対し、病人扱いではなく「生活の保持」を大切にし続けたというお話が大変印象的であった。
廣江仁 (社福)養和会指定障がい者福祉サービス事業所F&Y境港所長
第二部では、まず、助川人間福祉学科長から、「ピア・スーパービジョンとは何か」という短いレクチャーがあった。
「自分の実践経験を宝物にし、仲間との交流により、社会福祉実践の意義を再確認してほしい」といった話であった。
続いて、3つのグループに別れ、在校生が先輩達をぐるりと取り囲む形で、発表や意見交換が行われた。今回は卒業生達の経験交流や情報交換と同時に、特に助川、相川ゼミの全学生に呼びかけ、卒業生との交流を設定した。
在校生との交流では「社会福祉従事者としての生きがい」「苦労していること」「ストレス解決法」「社会福祉の将来」などに関する質疑がなされ、初々しい質問に泣き笑い、盛り上がり、時間が足りないほどであった。
最後に、助川先生からコメントと熱い励ましのメッセージをいただいた。
なお、次回、第7回ピア・スーパービジョンは2011年2月26日(土)13時30分より新都心ビジネス交流プラザ(埼京線・北与野)にて開催予定である。
スーパービジョンの様子
※ピア・スーパービジョン参考 (こちら↓をクリック)
社会福祉とは何か
相談業務とは何か
スーパービジョンセンターとその事業
2010/11/17(水)人間福祉学部AH講演会のお知らせ
[聖学院大学(人間福祉学科)] 投稿日時:2010/10/26(火) 15:24
人間福祉学部AH講演会を行います。
人間福祉学部AH講演会
「祝島から見える“いのち”の営み ー 纐纈あや監督をお迎えして ー」
講演者:纐纈あや監督
日時:2010年11月17日(水)11:00~12:30
会場:聖学院大学 7号館4階 (7401教室)
講演概要: 映画『祝の島』 纐纈あや監督をお招きして自由学園を卒業後、
「いったい自分は何をすべきなのか」を求め続けた話や本橋成一監督や祝島の人との出会い、
多くの人々に支えられながら映画製作に辿りつくまでを語ります。
皆さんはこの「祝島」がどこにあるのかご存知ですか?瀬戸内海の離島ですが、農家漁業混在で本州に一番近い位置にあります。1982年に上関町長が町議会で原発誘致の意向を表明して以来、今日まで島民は反対運動を続けています。残念なことに2001年、山口県知事も条件付きで上関原発計画に同意し、2012年6月には1号機が着工する予定です。
この上関原を巡って、島民は今日も(28年間)毎週月曜日に反対運動を続けているのですが、過酷な環境での生活にも関わらず、島民の表情が生き生きとしています。 纐纈さんは、そうした祝島の人たちを記録したいと考えて、祝島に2年近く居住して撮影した作品が「祝の島」の映画です。
纐纈あや監督
【お問合せ先】 企画総務課
事前申込は不要です。
TEL.048-781-0925
大木英夫理事長がキリスト教功労者として顕彰されました
[聖学院法人本部NEWS] 投稿日時:2010/10/25(月) 14:08
そのうちの1名として学校法人聖学院大木英夫理事長が、顕彰されました。
式典は、教文館ウェンライトホールにて、2010年10月25日午後1時より行われました。
顕彰後、大木先生の多彩な研究および教育活動について紹介がありました。
なお本学では、キリスト教功労者として、
2000年金井信一郎 元聖学院大学学長
2001年隅谷三喜男 元聖学院大学全学教授
2002年駿河敬次郎学校法人聖学院理事
2005年速水優 元学校法人聖学院名誉理事長、
2007年古屋安雄 元聖学院大学大学院アメリカ・ヨーロッパ文化学研究科長が、顕彰されています。
2010/10/20 創立記念講演会 姜尚中先生「生きる意味と教養」報告
[聖学院大学] 投稿日時:2010/10/20(水) 17:42
10月20日(水)、聖学院大学チャペルにて、東京大学大学院教授の姜尚中先生をお招きし、聖学院大学創立22周年記念講演会が開催されました。「生きる意味と教養―大学は何のためにあるのか」と題されたこの講演会には日本文化学科、児童学科、人間福祉学科の学生たちが参加しました。
講演会では、ご自身が幼い頃、近所で親しくしていたおじさんの交通事故での凄惨な死の場面を見、人は死ぬという事実を突きつけられたことから、「なぜ生きているのか」という問いを抱いてきたことを語られました。
こうした問いに対して、十代の頃の姜先生は夏目漱石やマックス・ウェーバーなどの文学や社会学者らの作品にのめり込み、答えを探してきました。
大学では、始めて全てを受け止めてくれる友人との出会いもあり、「生きる意味」について議論をかわしたことも幾度となくあったそうです。
ドイツと日本では、意味というものをめぐる社会学があります。解答のない問いを問い続けることこそが、生きる意味だと考える学問です。姜先生はこの問いを考えることについて教えてくれる場所が大学であり、教養であると話しました。
また、回答のない問い「生きる意味」を考え続けるには、教養がヒントとなり、助けとなることを示唆しました。
一方で、現在日本では年間3万人を超す自殺者についても話題は及びました。
統計上の3万という数を当たり前のように考え、自殺者にどうか他人に迷惑をかけないで自殺してほしいとさえ言う人がいる社会は、「生きる意味が空洞化している社会」だと話されました。
こういった空洞を埋めるものとして、これまでナショナリズムや宗教、戦争に傾倒する若者がいることもまた事実であり、先日起こった中国での反日デモもこれに連なるものではないか、と言及しました。
生きる意味に結論は無いと語った上で、自身が尊敬する韓国の元大統領金大中氏についても話されました。
金大中氏も「生きる意味」を模索し続けた人です。敬虔な信仰をもち、実事求是をもとめたからこそ、どういう時代であるかを見抜くことができたのです。
また、金大中氏と交流のあった姜先生は金大中氏の奥様から西郷隆盛の言葉である「敬天愛人」という言葉をいただいたことがあるそうです。
天を敬い、人を愛するというこの言葉に「生きる意味」に対する一つの答えがあるのではないかと姜先生は話しました。
姜先生は最後に、「生きる意味を問い続けてほしい。社会は10年経つと変化するからこそ、10年後にまたここで皆さんとお会いしたい」と締めくくりました。
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2010年10月
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