大きくする 標準 小さくする

聖学院大学 創立20周年記念

<<前へ次へ>>

2008/12/03講演会報告 加藤紘一氏「時代の変革期に直面する日本」

[聖学院大学(政治経済学科)] 投稿日時:2008/12/03(水) 18:06

12月3日、政治経済学部主催の加藤紘一氏(衆議院議員・本学総合研究所客員教授)講演会が、11時10分からチャペルで開かれました。

 

「時代の変革期に直面する日本」というテーマで1時間にわたり、学生と近隣から集まった市民に語りかけられました。

 

加藤紘一氏は今年から本学総合研究所の客員教授に就任されましたが、今回の講演が初講義になります。

 

まず加藤氏は、現在の政治状況を、支持率というメディアの世論調査に動かされる、という問題を指摘しながら、素朴な疑問や幼児のような素直さで問題を見ていくことが大切で、少しずつそうした国民が出てきていると分析しました。

 

 

組織の悪口をいいながら人気を取るということをやり、さらに郵政民営化などの改革で大都市と地方、正社員と派遣社員の格差を広げた問題など、小泉改革の意味をもう一度考えなおす時にあると指摘。

 

そのうえで、学生に、小泉改革の原点になっている、ミルトン・フリードマンの新自由主義経済学が、いかにイギリスのサッチャーの政策に取り入れられ、それがマネー至上主義になり、今回の金融危機につながったかのプロセスを学んでみることを勧めました。

マネー至上主義が、教育に取り入れられた教育バウチャーのような考え方、日本の学校選択制のような制度にも問題を起こしていることも指摘されました。

 

戦後の自民党の果たした役割と最近の大衆に迎合するポピュリズムへの変質を指摘した上で、大平元首相は消費税を導入することで命を落とし、竹下元首相は消費税の導入をした上で責任を取り引退した、このように自民党は責任を果たしてきたが、小泉元首相も消費税のアップをやるべきであった、とはっきりと述べられました。

 

 

「1908年夏目漱石は『三四郎』の冒頭で、

『西洋のまねでいいのか、こんなことをやっていたら日本は潰れる』と書いている。

日露戦争の勝利に浮かれて、諸外国を低く見るような気分になった時に警告をした。

それが100年後の今、私たちへの問いかけとなっている」

と日本のあり方にも言及しました。

 

 

最後に日本は明治維新、国家神道以前の自然の中に神がいて調和を大切にするという姿に原点があると述べられ、理想の地方都市像を紹介されました。

 

「人口20万人くらいの地方都市を全国にいくつも作る。

たとえば個人でいえば、高校は地元の高校を出て、大学は仙台、東京、大阪などの大学にいき、就職は地方に研究所があってそこに勤める。そこで家庭を持ち、週末にはスポーツの指導をし、町でのお祭りに参加していく。また数年に一回は国際会議に出て発表をし、最新の研究を学んでくるという生活。

その都市は10%は世界市場に通用する製品を生産し、30%全国に通用する農産物や製品や作り、残りの人は地域でのサービスや消費されるものを作るという形の地方都市」

 

というものです。

 

最後に会場から質疑応答に答えて12時20分に終了。講演は、学生のほか、外部の来場者だけでも約150名と、非常に多く、政治経済学部主催の締めの講演として、ふさわしく盛会となりました。

なお、昨年、本学で姜尚中氏と一緒に講演されたものは「創造するリベラル」(新泉社刊)として出版されています。

 

▼写真左:講演後、質問に答える加藤氏

写真右:『創造するリベラル』が同時販売されました

 

「時代の変革期に直面する日本」(講演会お知らせ)

 

政治経済学科ホームページ

 

加藤紘一氏公式HP

 

※12/12:写真を変更・追加しました (写真撮影:石原康男)

 

2008/10/22講演会報告 山形和美氏講演

[創立記念行事紹介] 投稿日時:2008/12/02(火) 11:39

10月22日(水)11時よりチャペルにて、創立20周年記念講演会の一環で、日本文化学科主催の講演会がありました。


 

講演者は、聖学院大学大学院教授の山形和美先生で、

タイトルは「キリスト教と文学-西洋と日本 二つの融合を求めて」。

 

 

西洋、日本文学より具体例をとりあげ、キリスト教と文学の関係を詳しく講演してくださいました。

 

■参考

 

山形和美氏プロフィール:
文学博士 聖学院教授、筑波大学名誉教授、日本キリスト教文学会会長

イギリス・フランス・日本などにおける<文学と思想とキリスト教>の関係を哲理的にまた根源的に捉えて注目され、内外の批評界に独自の地歩を築いている。

 

著書等:

「岩のつぶやき-現代キリスト教徒文学論」(笠間書院)

「メドウ-サからムーサへ-文学批評の布置」(彩流社)

「グレアム・グリーンの文学界」(研究社出版)

「言語空間の崇高性-ロゴスへの意志」(彩流社)

「キリスト教事典」(共著 岩波書店)

「山形和美全集 全14巻」 など多数。

 

 

 

 

 

2008/11/26講演会「アメリカとは何か」その2

[聖学院大学(政治経済学科)] 投稿日時:2008/11/28(金) 15:52

11月26日に行われた講演会「アメリカとは何か」アンケートより、一般の方々からのご感想の一部をご紹介します。

 

・奥平先生のオバマさんを信じられる経験の「2点」のお話、心打たれた。大きなうねりのこの時期に「アメリカ」という大きなテーマで、お二人のお話を伺えて、とても有意義だった。田母神論文にまつわるお二人のご見解も伺えてよかった。

 

・お二人の先生のお話は主題「アメリカ史の文脈から考える」で、戦中戦後の民主主義の方向づけなど、その流れが分かった。そして、今年のアメリカの金融危機、世界同時不況の中で、来るべき新しい年、アメリカを運営するオバマ大統領の政治にも注目していきたい。大変良い時期に良い講演を聴き有意義だった。

 

・大変内容の濃い講演で、自分の記憶にしかりとどまるものになると思う。貴重なお二人の講師の方々の話がこんな形に、すぐ近くで(無料で)聞けたことを感謝する。

 

・二人とも、大国アメリカの強国、大国をよい意味で褒めていたが、マイナス面も聞きたかった。すべてを論じる時、良い面の裏には必ず悪い面もあると思う。

 

・アメリカの変わり目と日本の変わり目に立ち会っている。心して生きていきたいと思った。

 

・もう少しお二人のお話を聞きたいと思った。とても興味深い話だった。ダブルスタンダードのアメリカとどのようにつきあうのか考えさせられる講演会だった。

 

・日本の多くの人々が知り、学ばなければならないことと思った。

 

・初めて講演会に参加した。まさに今知りたい内容を知る、大変貴重な機会となった。

 

・すばらしい企画だった。また大学で学びたくなった。

 

・一般社会人も聞けたこと、大変うれしく思っている。特に、上尾市に住んで30年、初めて貴大学に来られたこと、良かったと思う。

 

 

<<<講演会報告「アメリカとは何か」に戻る

2008/11/26講演会報告「アメリカとは何か」その1

[聖学院大学(政治経済学科)] 投稿日時:2008/11/27(木) 18:25

11月26日(水)11時より、奥平康弘氏・姜尚中氏による講演会「アメリカとは何か」が行われま した。まず姜尚中氏より、講演がありました。

 

・「極端な大国」というのがアメリカを語るときのキーワードだと思う。ニューヨークの摩天楼などがありながら、ハリケーン・カテリーナが襲ったニューオリンズなど犯罪率が高い地域が存在する。世界の大国、豊かさの象徴との互角に、貧困の大国でもある。

 

・コーネル・ウェスト氏(プリンストン大学教授)が、講演会でアメリカの誕生について語ってくれたが、2つの拮抗する傾向がある。「聖書的な開かれた共和国としての伝統」「外に膨張していく、帝国主義的な人種差別的な傾向」がある。

 

・マックス・ウェーバーが日露戦争のころに、訪米したが、その際に、近代の始まりと終わりの印象を持った。今起きている、金融破綻も、ある意味で、資本主義のひとつのサイクルの終わりであるかもしれない。

 

・ヨーロッパから見たアメリカとして、ハンナ・アーレントのフランス革命とアメリカ独立革命の比較、ネグリ『帝国』における、ヨーロッパとアメリカの主権のあり方の違いなどがある。ここにもアメリカの「極端」な在り方が見られる。

 

・ネオコンの論客、ローバート・ケイガンが論じた「アメリカはホッブス的世界を、力によってアメリカが掲げる民主主義を世界に広める」という動きが冷戦崩壊以降あった。それが悲惨な結果を生んでいる。80年代以降、レーガン政権からブッシュ陣営となるアメリカ史から、オバマ政権誕生により何かかがまた大きく変わるのではないか。

 

・今日の金融破綻、オバマ政権の誕生と、これは1つの国の中に、2つのnation(国)があるような状態にも見える。アメリカのハワイでうまれ、ケニアと関係の深い黒人と白人の間に生まれたオバマが大統領になったことは、驚くべき事件。開かれた共和制の自由が復活される兆しなのか。これをアメリカ史でどう位置づけるか。オバマ圧勝は、選挙という形で行われた革命である。changeではなくrevolutionである。アメリカの伝統というものが再生されるのではないか。

 

・インドネシアで幼少期を過ごしたオバマは、アメリカをアジア太平洋国家としての存在を望む方向に動くのではないか。そのとき、東アジア諸国はアメリカにどう対応するのか。

 

その講演に続くような形で、奥平氏より講演がありました。
ご自身のアメリカ留学経験などを重ね合わせ、「アメリカとは何か」について語られました。

 

・オバマ大統領誕生より前に、オバマの青年時代に「ハーバード・ロースクールのロー・レビュー(ロースクールの紀要)で、editor in chief(編集長)として史上初めての黒人学生」というニュースを、感慨深く聞いたことを思い出す。

 

・アメリカ合衆国は、民衆が集まった「合衆国」というより、「合州国」だというべきだという意見もある。state(州)が、集まって作られた国だが、州の利益を大切にしつつも、more perfect union(もっと完璧つながり)にしようという思いが強い。そのような歴史を反映した、憲法や選挙制度が残存している。

 

・多文化主義を唱える一方、人種差別が根強く残るなど、double standardが存在する。

 

・アメリカの愛国心(patriot)の持ち方とは、「日常生活において、愛国心を持つ」というような、身近で気軽なものであったが、イラク戦争の大義名分として利用されるような変化が最近見られた。

 

・オバマ大統領の誕生は、アメリカ自体の革命にとどまらず、世界的な革命であり、これにより世界が変わる歴史的な出来事である。

 

* * *

 

その後、2講師の対談や、聴衆からの質疑応答で

 

・日本のパワーエリートによる、アメリカに対する偏った見方
・アメリカの自由主義の伝統
・田母神論文の考え方

などのテーマが語られました。


アメリカのオバマ誕生の意味を考えることで、日本の外交上の立ち位置、世界情勢、歴史などに思いをはせる、広い視座を与えられる講演会となりました。議論がもりあがり、講演終了は30分延長の13時でした。

 

また今回の外部参加者は、20周年講演会で日野原氏講演に次ぐ多さで、215名となり、学生、教職員を含めると、総勢380名ほどの参加者となりました。

 

■参考
奥平康弘氏の講演で、アメリカの愛国心(patriot)を表す映画や絵として以下が紹介されました。
・映画「スミス都へ行く」 (1939)
・映画「ガダルカナル・ダイアリー」(1943)
・ノーマン・ロックウェル作の絵「4つの自由」(1943)

 

講演会告知内容

 

▼講演終了後、講演者を囲んで、政治経済学科学生、教員と

 

 

>>>講演会報告「アメリカとは何か」その2:参加者の感想へ

2008/12/03 講演会「時代の変革期に直面する日本」

[聖学院大学(政治経済学科)] 投稿日時:2008/11/21(金) 11:48

■ 日時 2008年12月3日(水) 11:00~12:30

 

■ 場所 聖学院大学チャペル

 

 

 

■ 講演者 

 

加藤 紘一 衆議院議員

1939 年、山形県出身。1964 年、東京大学卒業と同時に外務省入省。在台北大使館、在ワシントン大使館勤務、香港総領事館副領事、アジア局中国課次席事務官を勤めた後、1972 年衆議院議員初当選以来、当選12 回を果たす。内閣官房副長官、防衛庁長官、内閣官房長官(宮澤内閣)や、自民党政務調査会長、同幹事長など、政府と党の要職を歴任。2000 年に議員辞職し、750 回もの小集会を開いて地元の人々との対話から保守の原点に立ち返り、国政に復帰。2008 年、聖学院大学総合研究所客員教授に就任。著書に、『新しき日本のかたち』『テロルの真犯人』『強いリベラル』など。共著に加藤紘一・姜尚中『創造するリベラル』など。

 

 

■ 講演内容

 

アメリカに端を発した金融危機が世界を覆い、その混乱の波が日本を直撃している。生活の不安はますます重くのしかかり、希望の見えない時代の中、アメリカでは「変革」の理念を高く掲げたオバマ氏が、前例のないほど大きな内外からの期待を背負って勝利した。世界は、今、大きな変革期に直面している。迷走する日本の政治の舵取りはどうあるべきなのか。本学総合研究所客員教授就任を記念して、加藤紘一氏が変革期にある日本政治の課題を語る。

 

 

 

 

 

【入場無料・申込不要】

 

«前へ次へ»