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聖学院 On-line Information 2009/10/13

10/7児童学科AH報告「重い障害がある子どもとのコミュニケーション」

[聖学院大学(児童学科)] 投稿日時:2009/10/13(火) 11:14

10月7日(水)アセンブリー・アワーの時間に7401教室において、「重い障害がある子どもとのコミュニケーション」について講演会が行われました。
 

講師は、国立大学法人宇都宮大学教育学部で特別支援教育講座を担当されている岡澤 慎一先生。

 

先生は、重症心身障害児施設で出会ったNさんとの6年間の係わりを通して、人と人と係わるにはまず、「自分自身が変らないといけない」ということを語ってくださいました。

 

先生は、大学院1年生の時に、初めてこのNさんに出会いました。そして、食事介助で自らスプーンを持てないNさんに対して行った介助は、スプーンを持たせて食べさせること。すると、Nさんは、食べるとすぐにスプーンを放して、体を揺すったり、頭を突くなどの行動を起こし、食べるのを促しても拒否してしまったそうです。

どう係わっていったらよいか悩んでいる時に、先生が出会ったのが「相互障害状況」と「相互補正」という考え方。相手を変える前に、係わり手の変化が必要、自分自身を問い直していくことが大切ということでした。


そこで、先生は、まずNさんの視線の動きを見てみることにしました。Nさんの視線の先にあるもの(食べ物)を食べるように促してみる。そういう係わりを繰り返していくうちに、Nさんの視線がはっきりしてきて、さらには食べ物、食器に手を伸ばすようになり、また、ごはんをおにぎりにすると自らつかんで食べるようになったそうです。そういったNさん自身から食事に対して能動的、主体的に取り組むようになった頃には、頭を突いたり、体を揺するような行動もなくなっていました。

 

先生は、「かかわり」という言葉を「人と人とがかかわる」という意味で敢えて「人偏」を使った「係わり」という表現をされています。
そして、この重い障害を持ったNさんとの6年間の係わりで経験したことを「子ども」と接することについても、次のように語っておられました。

 

● 「こんなことができるはずはない」などといった思い込み、「全て理解している」と思っていたことは問い直していく必要がある。子どもの行動をしっかり見ていくことが大切。固定的な見方は、子どもの本来の行動を見えなくしている。正面からだけではなく、斜めから、また横から見ていくこと。
● 子どもの行動、一つ一つに意味があり、それらを考えていこうとする努力が大切。そして、その行動を叙述し、気持ちを代弁していくこと。それらを重ねていくことで、子どもの理解に近づいていくことができる。子どもがどんな思いでいるのか、思いを寄せることが大切。
● その人なりの「話し言葉」があり、表情の変化など様々なものを「言葉」として受信することが大切。その発する信号(自成信号)を読み取ることがコミュニケーションへとつながる。
● 係わり手が変っていけば、コミュニケーションは成立していく。
● 子どもとの係わりに対する自分自身の在り方を問い直していくことが大切。

 

<学生の感想より>

 

 重症心身障害者の方の変化を段階を追って見ることができてラッキーだと思いました。一歩ずつできなかった事ができるようになり,“いい顔”をみせてもらえる。その喜びは係わりを持ち続けなければ,生れはしないものだと感じました。そしてあきらめず,向き合うことが,障害をもつ方との係わり合いを深くする第一歩なのだと感じました。とても大変な仕事だとは思う。正直に言って自分はどう係わったらいいかわからず,近づくこともできなかったはずです。しかし喜びを知り,自分が成長していく中で係わりをもつ相手も成長してくれたらそれはロマンチックなものになると感じました。貴重なお話をありがとうございました。(S.M

 

 

人との係わり合いをもつには自分のあり方も考えなくてはいけないことを改めて感じました。障害をもつ人と係わる時に,その人が困っていたりするのはわかっていたが,その時,私たちのような係わる人も困っている時があり,それを相互障害状況ということははじめて知りました。私たちがすべてのことをしてあげるのではなく,障害をもつ人たちが自分からできることを増やしたり,拡がりをもてるような状況を作ることのほうが大事であることを学びました。コミュニケーションの手段に価値観の優劣がないという言葉にとても考えさせられました。(YM

 

 「障害」についての意識が大きく変わり,とても有意義な90分間でした。私は障害をもつ方に対し,全くかわいそうだという感情はありません。しかし,この考えは今まで漠然としたものでした。ですが,今回ではっきりしたのは係わり手が状況を読み,自らの在り方を問い行動することで相互輔生することができるということ,すなわち多くの人がかわいそうと感じる障害は,係わり手や周囲の状況と深く関係していて,それらがよい方向へ変ることで障害も軽減していくのだということです。

 行動を単体として見てかわいそうと感じることは,とても表面的かつあさはかだと思います。すべては文脈の中の一つであって,私たちはその流れの中での立ち位置を意識していくことが大切なのだと岡澤先生の話から感じました。(T.Y

 

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